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イーストヴィレッジでカスタムシューズを作っている
少し変わった靴屋さんです。
NYイーストヴィレッジの少し変わった靴屋さん
「East Village Shoe Repair」 No.16
2006.03.26

「常識?非常識?」


    お店に行くといきなりオーナーが怒っていました!“昨日は本当に嫌な客ばかり だった!”と。大体イーストビレッジのお客さんというのは、変な人が多くて、 とんでもなくばかげた事やらドーデモいいことやら、意味不明な発言や行動に あふれている・・・いつもの事だと思うんだけど。とにかく話を聞いてみることに。

    “1人のちょっと高級そうな売春婦(どんな売春婦!?)が靴のソールとヒール を交換しに来たんだ。で、客であろう男が車で彼女を待ってたんだよ。それがさー、 このストリートに店を出しているオーナーの1人で(ちなみにオーナーは彼が 大嫌いならしい)、奴は目を合わせないようにしていたけど、まあ後でなんだ かんだ言われちゃしょうがないからちょっと割引してあげたんだよね。そうしたら、 彼女こういったんだ。“

    “ソール(靴底)とヒールいっても、(品質が)良いのと悪いものがあるんで しょう?あなた達は悪いのを使ってるわけ?”

    “カチ−ンときてさこう言ったんだ。‘ああ、悪いのをつけて欲しかったら付けて やるよ!いやだったら他の店に行ってくれ。’ってね。それでも、彼女は帰らない から“直したいんだったらディポジッとを置いていけ‘っていたら’私、仕事を 見てからじゃなきゃ、払いたくないの’ときた。で、またこういってやったんだ ‘はあ、ディポジットを払えないんだったら、さっきも行ったとおり、シュー リペアはいくらでもあるんだからとっととどこかに行ってくれよ’って。でも、 まだいるから‘そこの車で待っているハズバンドに10ドルかりたらどうだい’って、 嫌味で言ってみたんだ。そうしたら彼女彼に金を借りに行ったよ。”

    一体何なんだろう?と思いますよね。散々、オーナーの気を逆立てておいて結局、 靴を置いていくなんて。わざとなのか、それとも彼女がとても高飛車な性格なのか? まったく理解に困ります。しかも、オーナーも負けじと嫌味を言いまくっていた のにプライドというものがないのでしょうか?それとも嫌味を言われている事に 気づかなかったのでしょうか?彼女は売春婦ですのでそのぐらいのゲームはわかる はずです。しかしながら、私の疑問は続けてオーナーが言ったストーリーで簡単に 解けましたよ!続きはこうです。

    “で、この靴をよくよく見たらね、誰かがすでにマークした跡があったんだよ。 彼女どっかに持っていたんだよね。ココに来る前に。で、俺が予想するに、 1ブロック先ののロシア人の爺さんのところだよ!だって、彼女、俺にもロシア人 なのかって聞いてたもん!”話を終えるころにはオーナーもすっきりしたのか、 笑いながら言いました。“彼女、行くところが他になかったのさ!”なるほどね、 つまりはこういう事が予想されます。彼女はあのような調子でグタグタと余計な 事をロシア人のおじいさんのシューリペアでも口走ったので、おじいさんはいつも のように、嫌な客が来たので彼女の靴を放り投げて‘俺の仕事の邪魔スンナ! 出て行けー!!’とやってやったのです。彼女はまた、ここで再び出て行けと 言われ(もう、すでに言われていたけど!)次を探すより、直してもらえるなら 直してもらったほうが良いと思ったのでしょう。

    以前、1人の若い女性がブーツのジッパーを直して欲しいとやってきました。彼女も 実はそのおじいさんに“出て行け!”とブーツを投げられた1人でした。彼女は とても礼儀正しい人でしたが、注文が多かったのがいけなかったのでしょう。彼女は オーナーに言いました。“このジッパーを直してもらいたいんだけど、できるだけ オリジナルに近い形と色がいいのよ。このブーツはとってもお気に入りなの? 大丈夫かしら?”“わかったよ、できるだけ似たような物を探してつけてやるよ。” とオーナー。“ありがとう。助かったわ!実はね、こんなひどい事されてね・・・。” 彼女は、おじいさんのところへ行ったときの話を私達にしました。

    彼女が帰った後、オーナーは言いました。“ジッパーの形がどうとか、そんな事を 聞いてくれる年寄りのシューリペアーはそうはいないわなア。彼女、余計な事を しゃべりすぎなんだよね。やつらはめんどくさい事は絶対しないよ!”そんなあ・・・ と思ってしまいましたが、オーナーの言う、シューリペアの常識はこうです。 “普通のシューリペアって言うのは同じ作業の繰り返しだし、材料だって同じ メーカーから発注して同じものを使っているものさ。彼女のためだけに特別にジッ パーを発注なんてしないよ。大体、何十年もやってきたプロの職人に、いちいち 何か言うのは失礼だよ思うよ。何も言わなくたってちゃんと合うものを付けて くれるよ。それに、言っちゃ悪いけどこのブーツ超安物だし。あの爺さんにしたら、 こんな安物のブーツ直すより、新しいのに買い換えろって言うだろうなあ。”

    ここのおじいさんに限らず、個人のシューリペアは結構ロシア人の人が多いのです。 (イタリア人も多いかな。)しかも今時の若い人はあまりやりたがらないので、 お年寄りが多いのです。そして頑固な人が多いと思います。よく言うと職人としての プライドがあるのです。このようなお客さんに愛想を振りまいて、ご利用ありがとう ございます!なんていいません。もう、お年寄りだし本人達もお金の事もあまり気に していません。あとは、ミッドタウンやウォール街のビジネスマン用の大きなところ。 たくさんのメキシコ人などが働いていて一日に、はい、次!次!とたくさんのリペア をこなしていくタイプ。ここでも、あまり色々と話を聞いてはもらえないでしょう。

    それが常識としたら私達は超非常識。だって、オーナー達は直したいと言われれば なんでも直してしまいます。靴底に大きな穴が開いたシューズ、半分無くなって しまっているようなスニーカー・・・。あのおじいさんなら“帰れ!”と言うような 代物を持って若者達は毎日のようにやってきます。“直せる?”“うん、直せるけれど、 こんな状態じゃ全部取り替えなくてはいけないから、新しいのを買うより高くつくよ。 いいの?”とアドバイスしてやります。“いいの、この靴が本当に好きだから!” と言う人、“そうだよねえ、何かいいスニーカーない?”なんて買っていってくれる 人も。そして、大体の人が直した後、また違う靴を直しに来てくれます。結局、靴に まつわるたくさんの話をお客さんから聞いて、すっかりカウンセラーのようになって しまうオーナー。靴の手入れの仕方まで丁寧に教えてあげてしまったりするので、 オーナーは一日中しゃべりっぱなしで、帰るころにはぐったりなんです。しかし ながらこの非常識さがお店の売り、オーナーとおしゃべりしたくってわざわざ遠く からやって来る人達だっているんだから、ありがたいと思わなくては、ですね。あの、 売春婦だって、結局靴を置いていってくれたんだし!

    ユカの『イーストヴィレッジ』
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    ユカ
    East Village Shoe Repair
    http://vintagecustom.00freehost.com/
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書・木村怜由

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