ニューヨークの街角から

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Off Off New York Tours, Mr. 川島 の 『素顔のニューヨーク』 No.21 2003.04.20

『ニューヨーク演劇情報』


    ニューヨークは金融の首都であるとともに、演劇の首都でもある。30人はいれ ば一杯になる小劇場から1000人は軽く入る大劇場まで、通常の演劇、ミュー ジカルからパフォーマンス、前衛演劇まであらゆる形態が混在する。現在景気の 後退、観光客の現象により、劇場は厳しい状態である。

    ブロードウエイのミュージカルでは現在昨年夏にオープンした「ヘアスプレー」 という1988年の同名映画を基にした作品が1番人気である。2001年ト ニー賞で最優秀作品賞に輝き、過去最大の12部門のトニー賞を制した「プロ デューサー」、6年目のロングランに入った、家族で楽しめるディズニーの「ラ イオンキング」、人気音楽グループ、アバの曲を使った「マンマ・ミア」も依然 根強い人気である。ロングランを続けているのは、昨年のトニー賞最優秀作品賞 の「ソローリー・モダン・ミリー」、「レント」、「オペラ座の怪人」、ディズ ニーの「美女と野獣」と「アイーダ」、リバイバル組として「キャバレー」、 「シカゴ」、「フォーティセカンド・ストリート」である。「レント」と同様に オフ・オフの小さい劇場から這い上がってきた「ユーリンタウン」も健闘してい る。昨年後期からの新作としては、12月にオープンした、映画「ムーラン・ ルージュ」の監督バズ・ラーマン演出のオペラ「ラ・ボエーム」、10月にオー プンしたビリー・ジョエルの音楽を利用した「ムービン・アウト」も人気があ る。今年に入っては、映画俳優のアントニオ・バンデラス主演のリバイバル「ナ イン」は4月10日にオープン。同じく映画俳優バーナデット・ピータース主演 のリバイバル「ジプシー」は5月1日オープンに向けて、プレビュー公演中であ る。1980年のジョン・トラボルタ主演映画をミュージカル化した「アーバ ン・カーボーイ」は3月27日にオープンした。

    近年のミュージカルは制作費が 高騰しているため新作をのせるより、かつて評価が良かった作品のリバイバルを 再演することにより、リスクを少なくしているので、新作の上演が控えられてい る。しかし新作ミュージカルは制作費が安い、中規模のオフ・ブロードウエイで 上演され、評価いかんによってはオン・ブロードウエイにのせようと狙ってい る。「レント」と「ユーリンタウン」はそのような小さな劇場から上がってきた 例である。16年のロングランを続けた「レ・ミゼラブル」は残念ながら5月 18日に終演となる。

    ミュージカルではない普通の芝居、ストレート・プレイとしての話題作は、映画 俳優のアル・パチーノとマリサ・トメイ主演、オスカー・ワイルドのリバイバル「サロメ」である。 現在プレビュー公演で4月30日にオープンするが、限定59公演で終わる。ピュ リツァー賞受賞作、ユージン・オニールのリバイバル「ロング・デイズ・ジャー ニー・インツー・ナイト(夜への長い旅路」は、バネッサ・レッドグレイブ、ブ ライアン・デネヒー、フィリップ・セイモア・ホフマン、ロバート・ショーン・ レナードといった人気大俳優が勢揃いする。18週間の限定公演だ。さらにヘレ ン・ハントが13週間限定の「ライフX3」に出演する。

    オフ・ブロードウエイではパフォーマンスの「ブルー・マン」と「ストンプ」が ロングランを続けている。「ブルーマン」はラスベガスの大劇場でもオープンし た。がんばっているのが、シェークスピアの「真夏の夜の夢」を70年代のディ スコ宮殿に舞台を移した「ザ・ドンキー・ショウ」、男性が裸で歌って踊るレ ビュー「ネイキッド・ボーイズ・シギング」。98年6月にオープンして以来人 気だったパフォーマンスの「デ・ラ・グアルダ」は残念ながら5月4日で終演と なる。かつて寂れていた42ストリートがタイムズスクエアから8番街にかけて は、劇場、映画館、ライブハウス、ヒルトンホテル、吉野家、キティーランド等 が並び、華やかになり、さらに西に延び、シアター・ロウと呼ばれていた9番街 から10番街のオフ・ブロードウエイの劇場もきれいになっている。ここではあ まり、またはまったく商業的価値を求めない良質の作品が上演されている。 ミュージカルはほとんど上演されないが、良質なダウンタウンのカンパニー、シ アター・フォア・ア・ニュー・アライアンスやニューヨーク・シアター・ワーク ショップのなどは芸術的な演劇を見せてくれる。

    100席以下のオフ・オフ・ブロードウエイではロングランされるものはほとん どないが、なかなか良質なものもある。また実験的前衛劇が多いので、好きな人 にはたまらないし、入場料が10?20ドルと安いのもいい。ミュージカルでも ブロードウエイの大劇場のように豪華ではないが、料金を考えれば、十分楽しめ るものもたくさんある。演劇好きがチェックすべきところは、寺山修司や東京ブ ラザースなど日本の劇団も足を踏み、世界中の演劇や前衛演劇が集まるラ・ママ やP.S.122、ヒア、キッチンなどで前衛アメリカ演劇、世界演劇の状況を覗くこ とができる。かつて寂れていたローワーイーストサイドは90年代の景気拡大と 治安改善によりバー、レストランなどとともに小さな劇場ができ、演劇関係者に は喜ばれたが、景気後退、補助金及び寄付の現象によりサーフ・リアリティなど の劇場が閉館に追い込まれている。

    マンハッタンの家賃の上昇とともにマンハッタンから地下鉄で1つ目の駅がある ブルックリン橋、マンハッタン橋の下あたりでは寂れた倉庫がギャラリーや劇場 に変わってきている。それにともないバー、レストラン、スーパー、コンドミニ アムまでできて、街を形成しつつある。ブルックリン橋とマンハッタン橋の間に は、セント・アンズ・ウエアハウスという劇場があり、映画俳優ウィレム・デ フォー属する前衛劇団ウースター・グループが昨年の「フィードル」に続き、3 月にチェーホフの三人姉妹を基にした「ブレス・アップ」を上演し、200人ほ どの劇場は芸術家、そのもどき、演劇マニアで満員であった。舞台には3台のテ レビモニターが置かれ、なぜか日本の古い時代劇やら盆踊りのシーンや怪獣映画 が映し出されていた。最近人気のウィリアムズバーグ地区ではガラパゴスという 劇場で前衛劇団コラプサブル・ジラフやラジオホールが脚本を解体したり、音響 効果、モニター、ビデオカメラなどを用いて実験的な演劇をしている。劇場の座 席は階段状でクッションが置いてあるだけで、40人ぐらいで一杯になる規模 だ。私が行った時はともに入場料が5ドル(600円ほど)で、劇場内にアイス ボックスがあり、入っているビールを勝手にとってただで飲むことができた。ま た観客は上演中にビールを飲みながら、平気でたばこを吸っていた。

    Off Off New York Tours 川島 裕次
    Mail:kawashima@offoffny.com
    HP:http://www.offoffny.com

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書・木村怜由

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