ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

New York Black Culture Trivia 2007.09.18
堂本かおる の 『from ハーレム』 (No.84)
★イラク戦争の真実★
〜米軍に入隊する若者たちと、変わりつつあるアメリカのメディア〜
あれから6年。イラク戦争はいまだに続いている。アメリカは今も戦時下にあり、 兵士たちは今日もバグダッドで戦死し続けている。 今年の夏、ハーレムウィーク(毎年恒例のストリートフェスティバル)に アメリカ軍のリクルートブースが初めて出店した。長引くイラク戦争と増える 戦死者に若者たちが恐れを成して入隊者が激減、兵士不足を招いているのだ。 ハーレムに隣接するラティーノ・コミュニティー、スパニッシュハーレムや ワシントンハイツのフェスティバルにも、やはり米軍ブースは出店し、 パンフレットを配っていた。 今日9月17日のニュースに、ハーレムの北に広がるラティーノ街、ワシントン ハイツ出身の兵士の悲報があった。ホワン・アルカンタラ(戦死時22歳)は ドミニカ共和国からニューヨークに5歳で移住。米軍入隊時にはグリーンカード (アメリカ永住権)保持者で、アメリカ市民権は持っていなかった。米軍は グリーンカード保持者が入隊すると市民権をスピード配布しており、これが 「アメリカ国籍を持たない米兵」が2.1万人も存在する理由。 アルカンタラ兵士は8月に戦死。本来はそれ以前に帰還するはずだったのに、 兵士不足からイラク駐留の延長を申し渡され、6月に長女が生まれた際の帰国 願いも却下されたと言う。若き父親は生後6週間の娘に会うことなく、バグ ダッドに近い町で爆死し、死後、念願の市民権を授けられた。
昨年、ある雑誌の記事のために私がインタビューを申し込んだイラク帰りの元
州兵(ブルックリン在住、アフリカンアメリカン)は、大学への奨学金を得る
ために入隊し、イラクに派兵された。彼は「イラクで何度も戦闘を体験し、
帰還後はPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされている」と言った。 * * * * * * * * * * * * * * *
先日、ケーブルTV局HBOが『生存の日の記憶〜イラクからの帰還』ALIVE DAY
MEMORIES: HOME FROM IRAQと題されたドキュメンタリーをオンエアした。
イラクで重傷を負い、障害者となった元兵士たちへのインタビュー集で、
聞き手はドラマ『ソプラノ』の主役だったジェームズ・ガンドルフィーニ。 10人の兵士が義手、義足、義眼姿でカメラの前に座り、爆撃を受けた当日の 記憶、その後の肉体的、精神的な苦しみ、現在の心境を赤裸々に語った。 戦争批判や政治的な意見は一切はさまず、個々人の心情のみが語られた。 入隊の動機は「愛国心」「不良仲間との縁を切るため(女性兵士)」など さまざまだった。 医療技術の飛躍的な向上に伴い、ベトナム戦争時なら間違いなく死亡していた であろう重傷者が、今は『生存』することが可能なのだ。ただし、吹き飛ば された手足を再生することは現在の技術をもっても出来るはずはなく、精巧 に作られた義手や義足を装着することとなる。 彼らが義手、義足でスポーツやダンスを楽しむ映像も流され、その肉体と 精神の強さに驚かされる。その一方で、右腕を肩から無くした元女性兵が 「将来、子供を生んでも両腕で抱いてやれない」と絶句するシーンは、深く 静かな衝撃を視聴者に与える。 「市民権」「奨学金」「愛国心」「人生のやり直し」……。さまざまな動機 で入隊する若者たち。市民権と奨学金に関しては、それをエサに軍が移民や 貧困層の若者を釣っていると言えるかもしれない。けれど、最終的に選択を するのはあくまで本人。ただし、入隊を考える若者と家族に戦争の真実を伝 える義務が政府・軍とメディアにはある。
イラク戦争(2003年3月〜)
アフガニスタン侵攻(2001年10月〜)
データは以下より抜粋(2007/9/17付)
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2007/9/18
堂本かおる |

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