ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

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New York Black Culture Trivia
New York Black Culture Trivia 2005.07.01
堂本かおる の 『from ハーレム』 (No.76)

「音楽の子」

    黒人がみんな音楽の才能があるというのは大間違いだけれど、「み んな音楽とダンスが好き」というのは、ほぼ断言できると思う。黒 人やラティーノのコミュニティでは生活に音楽が根付いていて、音 楽は常にダンスとセットになっている。

    ただ、ここハーレムにも「本能が音楽を欲している」タイプの人間 が結構大量にいることも確か。そういう人間にとって、音楽とは好 きとか嫌いとかいうレベルのものではなく、骨の髄にしみ込んでい るもののようだ。

    今日、ハーレムの学童保育所に初めてやってきた5歳のジェローム (仮名)。男の子にしては可愛いらしい顔立ちで、コーンロウにし た頭にオリーブグリーンのスカーフを被っていたから最初は女の子 かと思った。

    態度も大人しくて、名前を聞いてもささやくような声で答える。最 初は静かにコンピュータで遊んでいたけれど、そのうちに「頭が痛 い」と、やはりほとんど聞き取れないほどの小声で訴えてきた。熱 はなかったけれど、風邪の引きはじめかもしれない。

    その時、教室の仕切りの向うからヒップホップが聞こえてきた。メ ディアクラスがビデオ番組を編集しているのだ。するとジェローム は途端に曲に合わせて頭と身体を揺らし始めた。「あぁ、この子も 音楽の子なのだ」と思った。

    その後、他の子どもの相手をしていて、ふとジェロームを振り返る と、涙をぽろぽろこぼしている。どうしたのと聞くと、答えは予想 通り「マミーに会いたい」。このセリフをいったん口にすると、も う歯止めが効かなくなって大泣きとなった。

    典型的な「mama's boy の我慢強いバージョン」だ。母親との絆が 極端に強くて人見知りをするタイプ。けれど「学校や保育所ではちゃ んとしなくてはダメよ」と母親に言われているし、不平不満をはっ きりとは言えない性格(少なくとも他人には)。けれど内心では母 親が見えるところにいないこと、他人に囲まれていることからくる 不安でいっぱいなのだ。だから最初は我慢していても、ある瞬間に プチッと切れて号泣を始める。

    ところが泣き出す直前の、淋しさと不安ではちきれそうになってい た瞬間に、それでもヒップホップを聞けば自然と身体が動いたのだ。 ジェロームは間違いなく、音楽の子だ。

    泣き続けるジェロームをなんとかなだめ、無駄だと思いつつも、 「じゃあ、また来週会おうね。来週も来るでしょ?」と聞いたら、 なんとジェロームは首を縦に振った。「ちゃんと来なくちゃだめな んだ」と、子どもながらに頑張っているのだ。それとも「ここに来 れば、他の保育所と違ってヒップホップが聴ける」とでも思ったの か。音楽の子。

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    2005/07/01 New York Black Culture Trivia #391より#

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書・木村怜由

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