ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

New York Black Culture Trivia 2004.12.01
堂本かおる の 『from ハーレム』 (No.72)
「海賊盤を巡る人さまざまon 125丁目」
地面に敷かれた透明のビニールシートにたくさんの海賊盤CD。ビニールシート は四隅がめくり上げられ、CDがくるまれたようになっている。その背後には アジア系の警官。 海賊盤を売っていた男たちの姿はすでにない。ふつうなら警官の姿を遠くに見つ けた瞬間にCDをまとめて走り去るのだけれど、今日は警官が真近に来るまで 気付かなかったのだろう。商品を残して逃げてしまったのだ。 通行人の黒人男性が警官に向かって大声を出す。「お前はハーレムで働く、人種 差別主義者のチャイニーズだ!」 その瞬間に、アジア系警官のパートナーが車道を横切り、現場にやってきた。 警官は単独ではなく、必ず複数で勤務するのだ。パートナーは黒人だった。 通行人の黒人男性は一瞬ひるんだように見えたものの、さらに声を上げる。 「お前の仲間だってチャイナタウンで海賊盤を売ってるじゃないか!」 これが、黒人だけが持っている「誰のことでも好きなだけ人種差別主義者呼ばわり できる」、お得なライセンスだ。「自分たちはいつも差別されている」という 被害者意識が高じ、黒人が非黒人によってダメージを被ると、黒人側に非がある 場合ですら「人種差別だ!」と主張する。 (1)アジア系警官は任務を果たしていただけ。しかも、今日は積極的に海賊盤 売りを逮捕しようとしたのではなく、売り手が先に逃げてしまったのだ。 (2)「アジア系=中国系」「中国系=チャイナタウン」というステレオタイプ。 警官は韓国系だったかもしれないし、それ以外かもしれない。サングラス をかけていたので、私にすら判別できなかった (3)仮に警官が中国系であっても、彼の「仲間」がチャイナタウンで海賊盤を 売っているわけではない 「黒人地区で働くアジア系警官」である以上、こんな体験は珍しくないのだろう。 警官は男性の罵声には応えず、淡々と任務を遂行していた。 そこへたまたま通りかかったのが、交通課の警官(黒人女性)。彼女はウンザリ したように「Take them.」(さっさとCDを押収して、行ってしまいなさい=意訳) とつぶやき、歩き去ってしまった。
ちなみに、本屋での用事を済ませて1時間後に同じ場所を通り掛かると、もちろん
別の海賊盤売りが商売をしていた。アメリカのクリスマスって物入りだからね、
みんな稼がなくちゃ。
ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア
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