ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

New York Black Culture Trivia 2003.10.26
堂本かおる の 『from ハーレム』 (No.62)
「タイガー in ハーレム」
土曜日の午後、141丁目のプロジェクト(低所得者用公共アパート)の一室で、 トラが発見されたのだ。トラ。本物の、生きている虎。タイガー。 ここに住んでいた男は、おそらく100世帯は入っているであろう高層アパートの 5階で、何食わぬ顔をしてトラを飼っていたのだ、ペットとして。ところが3日 前に自分が脚と腕を噛まれてしまい、病院へ。そんな事情でトラの世話を怠った のだろう、階下の部屋の天井から大量のトラのおしっこが染みだし、ワケのわか らない匂いも漂いだした。 通報により駆けつけた警官は屋上から宙づりになって、5階の窓へ。だってドア を開けたりしたら、トラが飛び出して逃げ出してしまう可能性もある。もしそう なっていたら、私のアパートはトラの脚(?)なら、おそらく5分もかからない 距離。ハーレムを走り抜けるトラと道ですれ違っていたかも、だ。 警官は宙づりのまま、窓に向かって吠えるトラに催眠弾を打ち込み、捕り物は 無事終了。(プロジェクトは高層建築だけど安普請だからベランダがない。警官 って大変な仕事だ。) アパートの住人も含めて、見物人はみんな楽しそうだった。 ちなみに別室では、かなり大きなワニも発見された。飼い主は一体、何を考えて いたのか? この男、低所得者住宅には住んでいたけれど、かなりのお金を持っているに違い ない。そもそもトラなんて正規ルートでは買えないから、闇で相当の金額を払っ たはず。しかも、大きくなったトラは毎日ものすごい量の肉を食べる。男の職業 はなんなのだろう? 噛まれたあと、当然の逮捕を恐れてフィラデルフィアまで 逃げた男は結局捕まったけれど、詳細はまだ報じられていない。続報を待つ。 ****************
◆New York Black Culture Trivia 堂本かおる(フリーライター) |

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