ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

New York Black Culture Trivia 2003.03.16
堂本かおる の 『from ハーレム』 (No.57)
「ハーレムの春」
ハーレムでもっとも荒んだゲットーと呼べる150丁目あたりの公園ですら、青い空 と白い雲を背景にバスケットボールのフープにジャンプしている少年たちがたくさ んいた。リトルリーグのチームも練習をしていた。フェンスの前のベンチにはおば あさんたちが座り、お喋りに余念がない。 通りにはハーレム名物のアイスクリーム・ワゴンが今年初めて繰り出していた。 中南米からやってきた小柄で勤勉なラティーノたちは、今年も秋までココナッツや マンゴ・フレイバーのアイスクリームを1ヶ50セントで売り続けるのだ。 公衆電話に寄りかかって、テイクアウト用の発砲スチロールのトレイから中華料理 を食べている若い男。わざわざ通りで食べなくてはならない理由など実はないのだ けれど、家に中にこもっていたくはないのだ。別の公衆電話には、二匹の犬を連れ た、やはり若い男。犬種もわからない巨大なグレーの老犬と、せわしなく動き回る 小さな茶色いテリアの取り合わせが可笑しい。 すれ違うおじいさんたちは、目が遭うたびに「やぁ、元気?」と声を掛けてくるか、 ただ頷いてみせる。よちよち歩きの子供たちは、こんな日差しの中でも心配性の 若い母親にまだダウンジャケットを着せられていて、頼りなげな足取りで母親に 手を引かれながら歩いている。ベビーカーの中では赤ちゃんたちが、急にまぶしく なった陽ざしがなんだか迷惑そうで、目をしかめている。 このまましばらくはこんな春の光景が続いて、そして、ハーレムには今年もまた、 あの暑い夏がやってくるのだ。 ****************
◆New York Black Culture Trivia 堂本かおる(フリーライター) |

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