ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

New York Black Culture Trivia
New York Black Culture Trivia 2002.02.08
堂本かおる の 『from ハーレム』 (No.43)

映画・コンサート・展覧会・テレビ・本




    今回はちょっと軽めに、最近観た映画、コンサート、展覧会、読んだ本 などについて。

    ●映画「Monster's Ball」

    まだまだ信じられないほど強烈な黒人差別が残るアメリカ南部で、刑務 所員の白人男(ビリー・ボブ・ソーントン)と、夫が死刑に処された黒 人女(ハリー・ベリー)が出逢い…。

    最初は“美しすぎる”という理由で出演を断られたハリー・ベリーが、 監督を説得し続けて役をゲットした渾身の一作。彼女はこの作品でゴー ルデン・グローブ賞の主演女優賞にノミネートされた。

    ハリー・ベリーは黒人と白人のミックスで、それが彼女に“黒人差別” に対する複雑な思いを持たせている、と本人は言う。

    朴訥(ぼくとつ)で、けれど一本筋の通った南部男を演じたモス・デフ は、もはやラッパーの片手間出演などはなく、役者そのもの。対してピー・ デディ(と呼ぶのもなんだか馬鹿げているパフ・ダディ)は、出演して いる理由が不明。役を欲しがっている優秀な黒人男優はたくさんいると いうのに。

    ちなみに“モンスターズ・ボール”とは、希望通りの食事、家族との面 会など、死刑囚に与えられる最期のもてなしのこと。

    ※HPには関連サイトへのリンクがあります。
    http://members.aol.com/NYBCT/

    ●映画「Pinero」

    1970年代に活躍し、今もイーストビレッジにある“ニューヨリカン・ ポエッツ・カフェ”を創設した実在のプエルトリカン詩人、ミゲル・ピ ニェーロの伝記映画。プエルトリカンによるアートをテーマにしている ところは、とても貴重。

    ニューヨリカンとはニューヨークに暮らすプエルトリカンのこと。故郷 プエルトリコに帰ったピニェーロが、地元の人々から「お前たちは、も はやプエルトリカンではない」的な扱いをされるシーンは、とても印象 的。ニューヨーカー or プエルトリカン…ここにも表れる、どっちつか ずの、ふたつのアイデンティティ。

    アメリカでは人気のドラマ「Law & Order」の刑事役で、またはジュリ ア・ロバーツの元恋人として知られるベンジャミン・ブラットが、これ までのクリーンカットなイメージを覆す熱演。ポエトリー・リーディン グのシーンも見事にこなしている。けれど、やはり育ちの良さが出てし まい(?)、麻薬中毒で友人(ジャンカルロ・エスポジート)のテレビ すら盗んで売り飛ばしてしまうピニェーロのダーティさは、残念、出て いない。

    ベンジャミン・ブラットは一見、なに人だか分からない不思議なルック ス。母親がペルー人で、父親は白人。この人もまたミックスなのだ。

    彼の出演した映画の中でいちばん記憶に残っているのは、LAの混沌とし たラティーノ・コミュニティで育つ3人の少年の人生を追った「ブラッ ド・イン、ブラッド・アウト」。

    ※HPには関連サイトへのリンクがあります。
    http://members.aol.com/NYBCT/

    ●アリシア・キーズ・コンサート@ラジオシティ・ミュージックホール

    歌っている時は成熟した大人の女のオーラ。曲の合間のおしゃべりや、 おそらく本人がアイデアを出したであろう舞台構成は、まるでティーン エイジャーのような無邪気さ。アリシア・キーズはつい先月、21歳になっ たばかりなのだ。

    ニューヨーク/マンハッタンのヘルズ・キッチン育ちの彼女は、ニュー ヨークのどこにでもある、ごくありふれたアパートの外観をステージ・ セットに選んだ。アパート入り口のストゥープと呼ばれる階段にバック・ バンドが立つ。そのアパート内部で繰り広げられる、男と女のすれ違い をコミカルに語って見せるアリシア。

    実はアリシアもバイレイシャル(異人種間に生まれた人)。はっきりと 書かれたバイオはないけれど、母親はおそらくイタリア系の白人ではな いかと思われる。白人の母親と黒人白人ミックスの子供が、当時はまだ まだ荒っぽい地区だったヘルズ・キッチンで暮らすのは、かなり大変だっ ただろう。

    けれど小さな頃からクラシック・ピアノを習い続けたアリシアは、リズ ム重視のヒップホップ世代の中では際立ったメロディのセンスと作曲能 力を持っている。しかも頭も良かった彼女は、16歳で高校を卒業し、コ ロンビア大学に入学。けれど音楽に没頭していたから、すぐに退学して しまう。

    音楽の才能・頭脳・美貌・タフさを併せ持つアリシア・キーズは、今後 がものすごく楽しみな逸材。

    ●ローレンス・ジェイコブ展@ホイットニー美術館(既に終了)

    2年前に亡くなった黒人画家の展覧会。40cm×50cm程度の小さな紙 にテンペラで描かれた絵画群。カラフルな原色の絵具を使っても、それ がテンペラだと特有の鈍いトーンを生み、独特の色合いとなる。

    1930年代に仕事を求めて南部から東海岸に大量に移住した黒人たちの 姿が、80枚もの作品により一連の物語として描かれている。そして 1940年代の活気溢れるハーレムの姿。

    雪の降りしきる週末ですら、展覧会は順番待ちの行列ができるほどの盛 況だった。

    ※HPには関連サイトへのリンクがあります。
    http://www.nybct.com

    ●オレの色は死だ/アイスT

    ラッパーのアイスTが書いた本。「ゲットーとはなにか」「ゲットーで 暮らすとは、どういうことか」が、シンプルな言葉で、これ以上はない というほどにはっきりと記されている。ゲットーで生まれ育ったわけで はない人間がゲットー製ヒップホップの本質を理解するのに役立つ(か も)。

    「子供の教育」にもかなりのページ数が割かれていて、彼が刹那的にギャ ングスタ・ラッパーであることを楽しんでいたわけではないことも分か る。もっとも書かれている内容すべてに賛同することは、とてもできな いけれど。

    ところで、しつこくバイレイシャル・ネタ。アイスTの子供“リトル・ アイス”も母親がメイキシカンなので、やはりミックス。これからの世 の中はバイレイシャルな人たちが重要なキーになるのかも。

    なお、アイスTも高視聴率の刑事ドラマ「Law & Order」で刑事を演じ ていて、ドラマの中では殺人犯やギャングを逮捕しまくっている。昔は ギャングだったくせに。

    この本(ブルース・インターアクションズ刊)は残念ながら、ほぼ絶版 ですが、大手書店なら在庫があるかも。もしくは以下で。
    http://www.amazon.co.jp
    原題は「The Ice Opinion」なので「オレの色は死だ」という邦題はちょっ とどうかと。

    ●バーニー・マック・ショー(Fox 5ch. 水曜9pm/NY )

    今、こちらで人気の黒人向けシットコム(コメディ・ドラマ)。スパイ ク・リーが撮った「ジ・オリジナル・キングス・オブ・コメディ」の一 員であり、最近では「オーシャン・イレブン」でカジノ・ディーラーを 演じているバーニー・マックが、妹の子供3人を引き取るはめになった コメディアン役。プロジェクト(低所得者団地)育ちの子供たちに手を 焼くアンクル・バーニーの姿に、アメリカ中(の、少なくとも黒人)が 毎週爆笑。

    それにしても、まったくありふれた設定なのに、どうしてこんなに人気 があるのだろう。実はバーニー・マック自身もシカゴのゲットー育ちで、 しかも家族のことではかなり苦労をしていて、そこから子育てには一家 言あるらしい。その昔ながらの「タフ・ラブ」(厳しい子育て法)が、 今では新鮮に映るらしいのだ。最近は黒人家庭でも甘い親が多いから。

    一方、デーモン・ウェイアンズが、やはり子供3人のパパを演じている 「My Wife & Kids」は、不思議なほどおもしろくない。妙に理解ある 父親振りだから?

    ※HPには関連サイトへのリンクがあります。
    http://www.nybct.com/

    「New York Black Culture Trivia #119」

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    ◆New York Black Culture Trivia 堂本かおる(フリーライター)
    HP: http://www.nybct.com/
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