ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

New York Black Culture Trivia 2001.0.0
Ms. 堂本 の 『ハーレム だより』 (No.32)
ニューヨークのジャズ 〜その現実〜
そんな大量の乗降客を見越して、ここでは数多くのストリート・ミュージシャンが演奏する。ブルース、ゴスペル、ロック、 ハウス、ラテン、さらにはフィドルや中国の横笛といったマイナーなエスニック・ミュージック…。 彼らが人の多い駅で演奏する理由は、まず第一にチップが稼げるということ。 さらには大きなステージで演奏するチャンスのない“売れない”ミュージシャンたちが、人前でプレイすることの快感を味わえる、 ということもある。 ある日の午後、ブルックリン−ハーレム−ブロンクスを繋ぐ2/3線のアップタウン(上り)ホームで、 ひとりのジャズ・ドラマーがソロ演奏をしていた。それを同じく2/3線のダウンタウン(下り)ホームから眺める。 ダーク・スキン(*)の若い黒人男性。短いドレッドロックに黒いランニング・シャツ姿。 ドラマー特有の、細身だけれど引き締まった二の腕。ドラム・セットの胴体も光沢のある黒。そして激しいジャズのビート。 プラットホームで彼の居るそこだけが、異様に“黒い空間”となっていた。 かなりアグレッシブなソロだから音量も大きく、だから向かいのプラットホームからも十分に聴くことができる。 それでも人々は、ほとんど興味を示さない。ニューヨークの大型駅であるにもかかわらず空調設備が調っておらず、 異常に蒸し暑いホームを、人々は無関心に通り過ぎ、ただただクーラーの効いた列車の到着を待つ。なぜなら、 彼が叩き出しているリズムが“ジャズ”だから。 ニューヨークはジャズの本場だと、よく言われる。けれどジャズのそもそもの演り手であった黒人はR&Bかヒップホップに流れてしまい、 ジャズを演る若手ミュージシャンは、今ではもうほとんどいない。ジャズ・クラブに行ってみても、 多くのバンドは年配の黒人と若い白人(時折日本人)の混合編成だ。そして観客は日本とヨーロッパからの観光客。 これが“ニューヨークのジャズ”の現状。 アメリカ人はもうジャズを聴かないから、数少ないジャズ・ミュージシャンたちは食べていくのに苦労している。 CDを出したり、一流ジャズ・クラブで演奏できるミュージシャンは、ほんの一握り。多くのジャズ・メンは不本意ながら レストランやパーティでBGMとしてのジャズを演ったりして生活している。 そういった場では客の会話の妨げにならない静かな曲が好まれ、時にミュージシャンが熱くなって ビバップなどをを演奏しようものなら、たちまち店のマネージャーが飛んできて「もっとクワイエットに!」と注文を付ける。 タイムズ・スクエアのプラットホームで、黙々と、延々と、ひとり激しいジャズをプレイし続けるドラマー。 反対側のホームから眺めているとやがて列車が入ってきて、そしてドラマーの姿は見えなくなった。 (*)ダーク・スキン=黒人のなかでも色の濃い(黒い)人を指す言葉。色の薄い(白い)人は“ライト・スキン”と 呼ばれる。どちらも日常的に使われる言葉。「マリークって人、知ってる?」「ええ、あのダーク・スキンな人ね?」
◆New York Black Culture Trivia 堂本かおる(フリーライター) |

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