ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム


New York Black Culture Trivia
New York Black Culture Trivia 2001.07.10
Ms. 堂本 の 『ハーレム だより』 (No.30)

地下鉄で見るエスニック地図
ワンデイ・トリップ in サブウェイ




    New York Black Culture Trivia #88
    ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア
    2001/07/10 発行分より

    ニューヨークにはたくさんの地下鉄が網の目のように張り巡らされて いる。マンハッタン内だけで乗り降りしていると、どの路線に乗っても 必ず白人、黒人、ラティーノ、アジア系が混じっていて、まさに“人種 のサラダボウル”な光景を目の当たりにできる。けれど、そのままブルッ クリン、ブロンクス、クイーンズまで乗り続けてみると、ひと駅通過す るたびに車輌内の人種構成が次々と変わっていくことに気付く。そう、 地下鉄に乗れば、ニューヨークのエスニック地図を実際に体験できるのだ。

    地下鉄2番線はブルックリン中央部を起点とし、イースト・リバーの 下をくぐってマンハッタンに入る。以後、金融街ウォールス・トリート、 グリニッジ・ビレッジ、タイムズ・スクエア、アッパー・ウエストとマ ンハッタン西側を下から上へと縦断し、セントラル・パークの下を走り 抜けてハーレムを通過。その後、ハーレム・リバーを越えてサウス・ブ ロンクスに入り、ニューヨーク市の最北端へと行き着く。この2番線に、 ある日の午後、端から端まで乗ってみた。
    (以下は駅名と到着時刻)

    ★Flatbush Av/Brooklyn College
    3:37pm
    ブルックリンの始発駅フラットブッシュ・アベニュー。このあたりは黒 人、特にカリビアンの多い地区で、車輌内の客もほとんどがカリビアン とアフリカン・アメリカン。車掌も黒人。すぐ近くにブルックリン・コ ミュニティ・カレッジがあるので、普段なら白人やアジア系の学生も多 少はいるのだけれど、夏休みの今は、ほとんど見かけない。

    ★Church Av
    3:42pm
    ホームの壁に羽飾りを付けたウエスト・インディアン(カリビアンの別称)のモザイク壁画が見える。

    ★Franklin Av
    3:51pm
    カリビアンがさらに多いクラウン・ハイツ地区へ行く地下鉄3番線との 乗り換え駅なので、多くの客が乗り降りする。“ハイチ”のロゴの入っ た帽子を被った50代と見える男性が、車内でクリオール語の歌を歌っ ている。ハイチはカリブ海に浮かぶ島国のひとつで、かつてフランス領 だったことから、フランス語、英語、現地語が混じって出来上がったク リオールという言語が使われており、ニューヨークに移住したあとも使 い続ける人がいる。歌というよりは、ほとんどオペラ調で、時にジェス チャー付きのドラマチックなセリフになる。車内の客は皆、可笑しそう に笑っている。その中には、アフリカン・プリントのドレスを着た西ア フリカ系の女性も。2番線はブルックリン内に16の駅を持ち、その間、 数人の白人、アジア系、ラティーノが乗り降りしたものの、客の圧倒的 多数は黒人。

    ★Wall St
    4:10
    列車はイースト・リバーの下を走り抜け、マンハッタンの最南端、金融 街として有名なウォール・ストリートに到達。朝夕のラッシュ時には証 券マンが大量に乗り降りする駅だけれど、まだ夕方4時とあってスーツ 姿の客は少ない。それでも両腰に携帯電話とポケベルを装着した若いビ ジネスマンを含め、かなり多くの白人が乗り込み、結果として車内は黒 人/白人半々のミックスとなる。

    ★42nd St
    4:23pm
    観光名所のタイムズ・スクエアも、ニューヨーカーにとっては複数の地 下鉄ラインが乗り入れている大きな乗換え駅に過ぎない。黒人、白人、 ラティーノ、インド系、日本人、韓国系など、あらゆる人種を含むかな りの人数が乗降する。いつのまにか車輌内ではスペイン語での会話もた くさん聞えてくるようになっている。

    ★96th St
    4:30pm
    ここはアッパー・ウエストと呼ばれる上流地区で、次の110th St.から がハーレムとなる。従って一般的には、ここがマンハッタンの白人の北 限。全ての白人がここで降り、以後、車内は黒人とラティーノだけにな る。とは言え、最近はハーレムに住む白人(特にゲイ・カップルが急増 中)や若い日本人も多い。

    ★125th St
    4:38pm
    ハーレムのメイン・ストリートにある駅。車輌内は相変わらず、そこそ こ混んでいるけれど、中国系の物売りがウォークマン使用者向けに電池 を売り歩いている。乗客が読んでいるものをチェックしてみると、中年 女性が「Black Robes, White Justice(*)」という単行本、ニューヨー ク・ヤンキーズの帽子を被った年配の男性がペーパーバック、若い女性 が「働く女性ベスト500」という雑誌、年配の女性が聖書、ラティーノ の女性が新聞を読んでいる。ハーレム内の各駅のプラットホームの壁に は黒人の歴史を描いたモザイク壁画があり、車輌内からも見える。

      ※裁判官は黒い法服を着ているが、正義は白人のものだ=つまり黒人は司 法の場でも差別されているという意

    ★149th St-Grand Concorse
    4:38pm
    ハーレム・リバーをまたぎ、ここから先はブロンクス。この駅はブロン クスの他の地区へと行く地下鉄5番線との乗り換え駅なので、乗降客が多い。

    ★3 Av-149th St
    4:45pm
    この駅から先、車輌は地上に出て高架を走り、サウス・ブロンクス地区 へと入る。黒人客も多いが、ラティーノの率が上り、かなり混んでいる。

    ★Simpson St
    4:51pm
    駅前に多くの店が連なり、ラティーノたちで賑わっているのが高架車輌 から見える。マンハッタンではほとんど消されてしまったグラフィティ が、ヒップホップ発祥の地であるここサウス・ブロンクスには、まだた くさん残っており、窓から目をこらせば傑作も見つかる。

    ★East 180th St
    4:48pm
    有名なブロンクス動物園を含む広大なブロンクス公園の南端にある駅で、 線路脇に地下鉄車輌がズラリと並んだ屋外車輌庫がある。かつてグラフィ ティ・アーティストたちはここに真夜中に忍び込み、スプレー缶アート を競い合ったのだ。

    ★Burke Av
    5:05pm
    高くそびえるプロジェクト(低所得者用アパート)の窓を見ると、クー ラーが取り付けられている窓は、数えるほどしかない。ニューヨークで はアパートメント・ビルの窓に取り付けられたクーラーの数で、その地 区の経済レベルが判る。終点が近づくにつれて、車輌内の人数がだんだ ん減っていくけれど、ラティーノ率はどんどん上っていく。

    ★225th St
    5:09pm
    ブロンクスもかなり北部。駅前に「カリビアン・モール」なる店が見え る。ラティーノが圧倒的多数なこのブロンクスにも、カリビアンやアフ リカンも住み始めている。

    ★Wakefield/241st St
    5:14pm
    終点駅。ブロンクスの最北端であると共に、ニューヨーク市の最北端で もあり、わずか2〜3キロ先がウェストチェスター郡との境界線。この 辺りは、そもそもはイタリア系の街であり、今でも住み続けている人た ちがいて、ラティーノの人波にポツン、ポツンとイタリア系を見かける。 なんとなく不思議な光景。

    ブルックリンを出発してから1時間37分。その間に地下鉄2番線内 の人種は、カリビアン→あらゆる人種の混合→アフリカン・アメリカン →ラティーノと移り変わった。ブロンクスの終点駅から再びブルックリ ンに向けて出発する地下鉄は、今度は逆の順序で人々を乗せてゆく。

    ブルックリンとブロンクスでは車輌内がマイノリティのみになったけ れど、全線を通して白人オンリーになった瞬間は一度もなかった。2000 年の国勢調査によると、ニューヨーク市に於ける白人の人口比率は35%、 またニューヨークは人種ごとの棲み分けが、アメリカ国内で最も激しい 都市のひとつだと報告された。

    参考:ニューヨークの地下鉄マップ(MTA=NY交通局)ホームページ http://www.mta.nyc.ny.us/nyct/maps/submap.htm

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    発行人:堂本かおる 
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    ◆New York Black Culture Trivia 堂本かおる(フリーライター)
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書・木村怜由

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