筆談とホワイトボード(2) (No.44)

筆談とホワイトボード(2) (No.44)


2003.04.02

(3月2日発行のメルマガのつづきです)

背景としては:

・日本側:
自らが出資している。そして経営は中国側に任している。話題はある商品の価格
について。日本側は商品価格を安易に安くするべきではないと思っている。
その理由は色々あるが、それをいくら中国側に伝えても一向に聞いてくれず、
低価格商法を続けていると言う不満を持っている。最終的には低価格商法を止め
適正価格にした事で会社を閉める事になっても構わない。誰の責任も問わない。
だから自分の意見である「低価格商法を止めて適正価格商法でしばらく様子を見て
欲しい」を中国側に理解してもらい実行してもらう事が目的。

・中国側:
経営は任されているがもちろん日本側の意見は重要視している。
商品価格については中国という土地柄、周りの市場を分析した結果、低価格商法
が正しいと考えている。任された以上責任を持って経営するのは当たり前でその
責任感から低価格商法を続けている。

・私の役割:
話し合いに先立ち、中国側の会社に社員として入社。事前調査済み。これを機会に
日中双方が本当に理解しあう事。そして、日本側の意向を背景を含め正しく伝え、
中国側の理解を得て、低価格商法を止め適正な価格での販売に変更させる事。

もちろん、まず初めにした事は日本側と十分に話し合いました。今、どういう状況
なのか、そして、それはどうしてこうなったのか、また、不満点は何かなど事細か
に聞き出し、その上でどうしたいのかをまとめ、それに対して予想される結果には
何があるかを事前に予測し、それに対しての対応も考えておきます。また、最悪の
場合を想定し、その場合どうなるのかなど私自身が中国側だと仮定してシュミレー
ションを行いました。

さて、実際の話し合いの状況です。まずは現状について日本側の認識をホワイト
ボードに書きます。これについて一つずつ段階を追って、中国側の理解と同意を
確認して行きます。

通常この段階で双方の理解や認識が違うと言うのはありません。つまり、双方とも
に一生懸命であり客観的な認識は同じなのです。

その次に、この状況を打開する為に日本側としてはこうする方がいいと具体的な
方法を提案します。そして、中国側が心配しているだろう事を予め予測しておいて
その事に対処する事も同時に説明します。

具体例の場合では適正価格販売路線を行う事で客足が減少し、その結果経営が
立ち行かなくなるだろうと言う中国側の「心配」に対しては日本側として一切の
責任は日本側が持つからまずはやって見て欲しいと説明しました。

通訳を介しての会議や話し合いはこれがコツかも知れません。

状況を説明し、その解決方法を示すと同時に考えられる反論や心配事項に対しての
解決方法までも一気に説明してしまう。そうでなければその途中で中国側の心配が
いきなり噴き出して来て話し合いが収拾つかなくなってしまうのです。

具体例の場合では「適正価格」と通訳した途端に中国側から「そんな事をすれば
会社の経営が危うくなる」「日本側は中国の事情が解っていない」など発言が始り
ました。でも、そこですぐで通訳するのでなく必要なら日本側に「今この件で中国側
は反論しているがもうしばらく待って下さい。」と一言説明し、予め日本側と相談
しておいた状況に基づいて日本側の考えを最後まで説明してしまいます。(この際
にもポイントはホワイトボードに書き出します。)

実際には上述のように一気に通訳した後でも、中国側の意見を聞くと、説明の途中
で発言があったような反論意見は出ます。それをここでも私が間に立ち「でも日本
側はこのように思っていると先ほど言ったでしょう?そしてその場合には全責任を
日本側がとる。中国側にお願いしたいのはこの状況でとにかく日本側の要望通りに
やって見て欲しいと言うことなんです」と補足説明をして行きます。(この際にも
日本側の発言内容を書いたホワイトボードの各項目を指し示しながら説明します。)

この間、通訳は一切せず、中国だけでやりとりしています。時折、日本側の確認が
必要な事項が出たらその都度日本側に確認しますがその他はずっと中国語で説明し
続けます。

かなり長い時間をかけて話し込んで行くと、最終的な中国側の「心配」が現れてき
ます。それは「日本側の意向は解った。でも責任をとると今言っているが実際に
その時になれば責任を中国側に押し付けるのではないか?」と言う心配だったのです。

そうなんです。日中双方の誤解の中で一番大きいのはこの「不信感」なのです。

言葉の問題があるので普段から十分に意見交換ができない。また、日中双方ともに
外国(人)の事は解らない。だから、日本側はいつも「中国側は日本側の考えを理解
していない」と不信感を持ち、中国側はいつも「日本側は中国の事情を知らず、我々
がどれだけ考えて努力しているか解っていない」と不信感がどんどん膨らんで行く
のです。

ホワイトボードを使用するのは発言を整理する為だけではなく、お互いの理解を整理
しそれを共通の場であるホワイトボードに書くことによって「視覚」で双方ともに
理解し合っている事を確認する為に必要不可欠な道具なのです。ですから、話し合い
の途中で中国側が「これは日本側が理解してない」と思っている事についてはホワイト
ボードに書き出しそれを日本側に説明します。すると中国側は目の前で文字にされ
通訳されている状況を見て不信感が一つ減るのです。

実際に書き出して見ると解るのですが「不信感」はそうたくさんあるものではなく
まとめてしまうと中国側は「ちゃんと考えて精一杯努力している」と言う事を日本側
に理解してもらいたいだけで日本側は「日本側の意向がちゃんと伝わっているか
どうか」を確認したいだけの事が多いようです。そして、最終的に出て来た中国側の
「本音」である「不信感」についてはっきりした時に日本側は「なーんだそんな事
を心配していたのか」と言う事になってしまう事が多いようです。

「そんなことなら初めからそう言ってくれたら良かったのに」

そうなんです、初めから「本音」を言い合える雰囲気なら問題ないのですが外国人同士
が一緒に仕事をすると言葉の障害から考えなくてもいい事を色々考えてしまうようです。

日中双方ともに一生懸命。でも、その一生懸命がお互いに十分伝わらない。こんな
ところに外国人同士が付き合う秘訣があるのかも知れません。お互いがお互いに対して
「相手は一生懸命だ」と言う事を十分に理解していたら多くの問題がすぐに解決する
のではないでしょうか?  (つづく)

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YAMAOKA yoshinori

yammy@mti.biglobe.ne.jp

http://www2s.biglobe.ne.jp/~yammy/

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