手袋事件:その1 (No.2-15)
日本の中の中国−中国人研修生とともに、滋賀県彦根市のある鉄工所で働いて いるのですが、そこで起きたことをご紹介しています。今回は「手袋事件」です。 鉄工所ではエンジンの部品を加工しています。NC旋盤やマシニングセンターで 鉄を削ったり穴をあけたりするのですが、その際、いつも油(切削油)を使用 します。この部品を着脱するのですが、いつも油まみれの加工部品を触るので 両手はもちろん油まみれです。この油。かぶれる人が多いようです。今の会社 には中国人以外にベトナム人もいるのですがその彼女が曰く以前油にかぶれて 専門医に治療してもらったとのことです。 そんな職場なのですが、ある中国人研修生が手袋をして作業していました。 この彼は日本に来て半年ほど、この油かぶれがひどく、あかぎれのようになり 血がにじむほどだったいいますが病院で診てもらい薬を塗ってやっと治って 来たとのことでした。でも、まだ完治しておらずちょっと気を抜くとかぶれて しまう。そんな状況でした。 その彼が部品の検査のときにも手袋をしていて日本人管理者から注意されました。 「検査のときには手袋を外せ」と。 20歳の若い中国人研修生は日本語がわからないのかそう言われてもすぐに反応 しません。黙って聞いているだけ。そして手袋を外す気配もありません。そこで 私が呼ばれ通訳をしたのですが、彼は日本語がわからなかったのではありません。 意味はわかっていたのですが自分なりに正当な理由があり外す必要はないと判断 したので言われたことを聞かなかったのです。 通訳が終わっても同じように無反応な中国人研修生を見て、日本人管理者 (18歳の若者)は「意味はわかったんでしょうか?」と私に聞きます。さすがに 「ちゃんと通訳してくれたのですか?」とは聞きませんでしたがこれまでの経験 で日本人の思うような結果(今回の場合、中国人研修生が自分の注意を聞き入れ 手袋を外すこと)がでなければまず通訳がちゃんと自分の言うことを正しく通訳 したかどうかを疑問に思うものですので言外に十分この「疑問」の意味がこもっ ていたの「おっしゃる通りに通訳し、彼も意味はわかっているのですが聞かない のです」と補足説明した次第です。その後、この中国人研修生にさりげなく、 またできるだけ自然な会話で、しかも「(私が)敵ではなく見方である」ことを アピールしながら「どうして」あの日本人の忠告を聞かないかと聞いたところ: 「あいつはいつも自分の機嫌が悪いとやって来て何かと嫌がらせを言う」 とのこと。 確かにその傾向はあるのですが、それでも部品検査で手袋を外すとは会社の規定 であり、また、何より加工製品の精度を重要視する会社なので素手の感覚を重要 視しており、精密部品の検査測定では手袋を外し素手で行う。ことの必要性も わかります。 と、この段階ではまだどちら(中国人も日本人も)その真意がわからないので、 日本人には次のように伝え時間をいただきました。 「中国人の表現はとてもシンプルです。例えばタクシーに乗ると、日本人は 『あのー、すみませんが大阪駅までお願いします。』というところ中国語では 『大阪駅』の一言だけ。今回もそれと同じで、彼としては『ありがとうございます。 おっしゃることはよく理解できるのですが、自分の場合油かぶれがひどかった のでできるだけ手袋は外したくないのです。申し訳ないのですが今しばらく、 油かぶれがよくなるまで時間をください。』というべきところあのようにぶっきら ぼうに返事もしない態度なのです。」 日本人の若い管理者は「一回で言う事を聞いて欲しいなあ(※注)」と言いつつ、 しばらく様子を見ようという事になりました。 ※注:「一回で言う事を聞いて欲しいなあ」この言い方、ちょっと問題がある ように思います。「言う事を聞かせる」何か上から下に人を見下すような感じが あるように思います。この「思い」が言葉が不自由だからこそ敏感に相手に伝わ っているように思います。中国人研修生は自分よりも若い日本人管理者。それも ほぼ同じ年齢の日本人から見下されていることを敏感に感じ、この管理者の言う 事を素直に聞けないのだと思いました。 (続く) Yammy ======================================== YAMAOKA yoshinori yammy@mti.biglobe.ne.jp Mr.Yammyの上海レポート第二弾バックナンバー ======================================== 第一弾「Yammyレポート」 バックナンバー
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