言葉について(その1) (No.2-1)

言葉について(その1) (No.2-1)



一年ぶりの中国。
今回は上海市の青浦区にある工場に来ています
一度はこの日中間業務を辞めようと思い、中国語の講師に専念しましたが、
どうやらまだ修行が足りないようです。

このようなまだまだ未熟な私なのですが、またレポートを書いてみないか
とのお誘いがあり、いまさら私が書くこともないだろうとも思ったのですが、
こんな私の経験でも、何かの役に立てばと思い思いついたことをレポート
しますので、どうぞよろしくお願いします。

今回の仕事は日本のあるパイプ会社が中国に作った工場の経営に問題があり、
その建て直し&管理体制強化のお手伝いです。

ここには既に日本の本社から派遣された日本人総経理がおられ、また、技術
面では日本の本社工場から臨時で派遣された日本人の工場長がおられる
のですが、日本人の意向がちゃんと中国人スタッフに伝わっていない。
つまり、中国人通訳がちゃんと日本人の意向を理解しておらず、ちゃんと
中国語にしていないのではないかと言う疑心暗鬼を抱いているということで
中国人通訳の状況確認(ちゃんと通訳されているかどうかの確認)と現場
作業員を含む中国人スタッフの労務管理強化のためにやってきました。

実際にこちらに来て、問題だと思われている中国人通訳の通訳状況を確認
しましたが、とても素晴らしい通訳をしていました。上海と言ってもここは
青浦区。少し前までは青浦鎮であり、田舎という雰囲気があったのですが、
そんな青浦にこんな優秀な通訳がいることにとても驚いた次第です。

もちろん、全く問題がないわけでもありません。通訳と言ってもまだ若い
通訳で、単語も完ぺきとは言えず私がところどころ意味を補ったりすること
もあるのですが、それでもわかりにくい日本人の日本語を、機械的に通訳
するのではなく、仕事を進めるという目的のために、日本人の言いたいこと
をちゃんと理解し、それを中国人にわかりやすく伝えると言う、ビジネス
通訳の基本はしっかり抑えていました。それでも日本人はその通訳に不満
を持っていた。その原因について私なりの考え方をレポートします。

先ず気付いたことは、中国人が日本人に伝えたいと思っている意味や状況が
完全に日本人に伝わっていません。それは中国人通訳ですからどうしても
日本語が不自由になり、日本人が十分にわかるように色んな日本語を駆使
して説明するということができていません。

私はこれを「中国人の説明不足」或いは「舌足らず」「言葉足らず」と呼
んでいますが、もちろん、これは単なる「説明不足」ではなく言葉という
壁がある以上、表現がどうしても舌足らずになるので仕方のないことです。

例えば、何か問題があったとして「例えば」とか「例を挙げて説明すると」
というときに、日本人なら相手の顔色を見て、相手が理解しているかどう
かを確認しながらくどくならないように「例えば」とか「例を挙げると」
とか「確認のために言うと」とかの言葉を入れるのですが、中国人は一般
的に直接的な表現になり、中国人通訳の日本語にこれらの言葉がないため
に日本人がイライラする。といった場面が多々あります。

例えば昼食についてです。いつもは工場の給食を食べているとします。
ある日、お客さんがあり、お客さんも工場で昼食を食べる。そんな状況に
なったとします。日本人同士なら相手の目顔を見て、目で相手に確認する
ようにして「お昼は工場でされますよね?」と言います。或いは「確認
なのですが」という言葉を付け加えたりします。でも、これが中国人通訳
ならこうはいきません。「お昼ごはんはどうしますか?」とか「お昼ごはん
は工場でしますか?」というようなぶっきらぼうな日本語になることが多い
のではないでしょうか?するとその日本語を聞いている日本人は「いつも
工場で食べているのでわかっているだろう。そんなわかりきったことを
どうして聞くのだ。ほんとに頭が悪い。」と思ってしまう。こちらでは
そんな場面が多いようです。

日本語というのは常に相手の顔色をうかがいながら、色んな表現を使い
ながら話を進める言葉なのではないでしょうか?それを外国人に求める
のはかなり酷なこと。そして、それは頭ではわかっているのだけれど、
実際に、中国で働き、日々中国人と接していると精神的な余裕が失われる
のかも知れません。でも、このこと。つまり「中国人は説明不足」になり
がちだということをわかっていただけると中国人が本当に伝えたいことは
何か。表現は単純だけれどその奥にある気持ちは何なのかと思いやること
ができればこちらでの仕事がずいぶんスムースになるのではないか。
そんな気がします。そして実際に私がしていることは中国人の話して
いることを聞き、日本人に「中国人は本当はこのように思っていますよ」
とか「こんなことを伝えたいと思っていますよ」と補足説明しています。
すると日本人は「ああ、なんだそうなんだ」となることが多いようです。

ほんのちょっとしたことなのですが、こんなちょっとしたことが積み重
なると大きなストレスになるようです。


Yammy
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YAMAOKA yoshinori
yammy@mti.biglobe.ne.jp
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