『黄山紀行』

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上海からのナマ情報【私の上海体験談】

上海から帰ってきた人たちから頂いた、上海最新情報をそのまま掲載させて頂いております。 あなたも「上海体験談」 をお寄せください 。そのままこのコーナーに掲載させて頂きます。なお、掲載させていた情報については、その著作権は「まるごと上海」に属しますことをご了承ください。 今回は、上海在住の高橋 善太さんから頂いた、「黄山紀行」です。 なお、この文章は、Zentaさんが発行されているメールマガジン『上海通信』5月分に、 3回に分けて連載されたものです。 1999年5月 特別寄稿

■□黄山紀行■□

■黄山行

 今回の旅行にさそってくださったのは、某会社社長のLさん。Lさんは中国人で すが日本滞在経験もあり、流暢な日本語を話します。同行したのはLさんの会社 の会社員6人。コンピューター関係の会社だけあってみんな(私より)若いです。 この黄山旅行は旅行会社企画のパック旅行で費用は一人800元(1万円強)。 4月30日 寝台列車で出発、車中泊 5月1日 朝黄山着 黄山市内を観光、宿泊 5月2日 黄山登山 夜、寝台列車で上海へ戻る、車中泊 5月3日 朝上海着 という日程でした。  上海駅から黄山までは寝台列車でおよそ12時間ほど。地図で見るとそれほど 離れていないようにも見えるのですが、かかる時間をみれば、なかなかの長旅で す。列車自体は黄山旅行用の臨時列車らしく乗客はすべて同じパック旅行の参加 者のようでした。旅行社のバッチと白い帽子ですぐに分るようになっています。  座席は3段ベットがずらりと並んだ硬臥と呼ばれるもので、見たところ全席埋 まっていました。  列車に乗り込むとみんなすぐに打牌(トランプ)をはじめるのですが、私はこ の「八十分」という名前のゲームのルールがいまいちよく飲み込めません。日本 語で説明されてもよく分りませんし、もちろん中国語で説明されてもわかりませ ん。こちらではたいへんポピュラーな遊び方なので是非マスターしようと思って いるのですが、どなたか詳しく知りませんか?  というわけで私は窓際の簡易イスに腰掛けて藤木稟の「ハーメルンに哭く笛」 を読みはじめるのでした。  列車は夜10時消灯ということで、あっという間(乗ってから2時間で)に真 っ暗になってしまったのですが。

■李ガイドさん(李導遊)

 黄山駅に到着し、さて観光用のバスに乗り込もうという際になってひともめあ りました。このバスがなんともすごい。少しばかり古くて汚いのはいいのですが、 普通のバスではなく、寝台バスとでもいうもので座席のかわりにベッドが並んで いるのです。ひげをはやしたガイドさん(男です)が平気な顔をして「ひとつの ベッドに3人座ってください」などというものですから、 「冗談じゃない!」という声があちこちからかかりました。 (私にとってはちょうどお座敷列車のようで面白かったんですが)  旅行客が多すぎて黄山全部のバスをかき集めても間に合わなかったというガイ ドさんの言い訳もわからないではないのですが、高い費用を払ってツアーに参加 した旅行客がこれでは納得しないでしょう。  といったところで現実にバスが足りないという状況ではどうすることもできず、 皆渋々といった感じで乗り込むのでした。  このガイドさん、実はあまり話をするのが好きではないようでした。観光案内 はもちろん、これからどこに行くとか集合時間だとかいった重要なこともあまり はっきりとは言わないものですから、ちょっと困りものです。  ハンドマイクも握ってはいるのですが、ほとんど使いません。ですから観光ス ポットで彼について説明を聞こうにも、まず彼の姿を探しあてることが大変でし た。しかも、彼は客が着いてこようがこまいが勝手にどんどんと進んでしまうの です。  極めつけは、彼自身が迷子になってしまい、我々が手分けして彼を探す始末。 この時は幸い私が発見した(動体視力はいいのです)ので、事無きを得たのです が、おさまらない旅行客は口々に彼を非難するのでした。

■お弁当

 黄山登山にあたっては各人お弁当の袋が一つづつ用意されたのですが、この中 身がまた面白いものでした。   「八宝粥」というお粥の缶詰2缶 ミネラルウォーター500ml2本 缶レモンティー1本 ソーセージ2本 ザーサイ1袋 豆腐干2袋 それに極め付けが"食パン一斤!" 中身を見てお気づきだとは思いますが、これがまた重いのです。これを手にした まま登るのかと思うとうんざりしてしまったのですが、捨てるわけにもいかず結 局道中ずっと持ち続けることになってしまいました(大半は途中で胃袋におさま ってしまったのですが)。

■日の出

 黄山登山は早朝(というか夜)2時出発。前夜はボーリングなどして、寝たの は12時ごろでしたのでほとんど寝ていませんでした。  私たちは百人乗れるというロープウェーに乗って(蛇道というなかれ)一足飛 びに山の中腹まで。降りてからは徒歩で一路見晴らしのいい地点まで進み、日の 出を待つことになりました。  しかしまあなんともたくさんの人が黄山に来ているもので、見渡す限り人の頭 ばかり。  そうこうしている間に日の出の時刻となりました。幸い地平線方向の雲はそれ ほど厚くないようです。気になるのは私たちの右手前方すぐの所にかかっている 雲でした。風にのって霧とも雲ともつかない白い靄が流れてくるたびに 「早く出てきて!」という 人々の祈るような声が聞こえました。  ほどなくして新鮮な卵の黄身のような黄金に輝く太陽が姿を見せました。神々 しいほどに美しく輝く太陽は見るものを魅了し、人々に 「おーーー」 というため息に似た声を出させるのでした。 (友人へのメールの中で"新鮮な卵の黄身のような太陽"という表現をそのまま 中国語に翻訳して使ってみたのですが、かなり受けがよかったです。「そんな言 い方聞いたことないわ」「どっかの作家の文章に書いてあったの?」とびっくり してましたよ)

■トレーニングの成果

 登ったり降りたりを繰り返し、気付いてみれば今日一日ほとんど歩き続けでし た。時間にして6時間ほど歩いていたと思います。私の後ろの席に座っていたマ レーシア華僑の姉弟(マレーシアに縁がある私)はまだ小学生にもかかわらず、 まったく疲れた様子を見せず、トトトと階段を駆け降りるようにして進んでいき ます。  Lさんの会社の会社員たちもなかなか元気ですが、女性の内には足元の覚束な い人も。  えっ、私ですか?  私はこれに備えて毎日トレーニングをしてきましたから大丈夫。というのは嘘 で、結構ひざにきました。

■ガイドさん、しっかり!

 帰りのバスは3時出発予定でした。ところがガイドさん、また失敗をやらかし てくれまして、バスの手配がうまく行きませんでした。2時間ほど遅れてなんと かバスに乗り込んだのですが、 「私の責任じゃありませんよ。コンピューターの問題なんです」と答えるところ はさすがというかなんというか。  こういう言い方をされて乗客たちが黙っているはずもなく、バスの中は非難ご うごう大嵐。しまいには乗客同士も言い争いをはじめ、とんでもない状況になっ てしまいました。  で、私はというと喧騒の中、寝不足がたたってうつらうつらと舟をこいでいる のでした。  しかし、このガイドさんの失敗はこれで終わりではなかったのです。  夕飯の支度ができているはずのホテルへ7時に到着。8時半発上海行の列車に 乗る予定だから余裕で間に合うはず。  ところが、ところが。  着いたホテルでは「そんな話は聞いていない。食べるものなんてありません よ」という。乗客達はまた爆発。 「俺達に飯を食わせないつもりかーー」と。  ガイドさん、今度はホテルの名前を間違っていたらしいのです。 幸いなことに食事を用意してあったホテルは近くにあって、列車にも遅れずにす みました。 さすがにガイドさんも乗客達に申し訳ないと思ったのか、バスを降りる乗客ひと りひとりに 「大変申し訳ございませんでした」と言っておりました。  ガイドさんもいろいろと大変なんでしょうし、彼だけを責めるのは酷なのかも しれませんが、さすがにミスが多すぎたと思います。まあ、私にとってはこれも 面白い経験でしたが、安くない費用を払って快適な旅行を楽しもうと思ってきた お客さんにしてみれば、納得いかないものだったに違いありません。

■ゴミの投げ捨て

 景勝地でも道路でもペットボトルや缶をポンポンと投げ捨てる人が多いのは見 るに忍びないです。 Lさんの会社の人など若い人を見ているときちんとごみ箱に捨てようとする人が 多いのですが、ある程度年齢が高くなるとゴミを投げ捨てることに何の抵抗も感 じていないようにみえます。  私はアメリカ華僑の友人であるエディのように、これを見るたびに本人に注意 を促したりする勇気はないのですが、見て見ぬふりというのもなんだかねぇ。 おわり ZENTA'S HOME PAGE ( zenta@uninet.com.cn ) Zentaさん、貴重な体験談ありがとうございました。(YoU)

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